掲載号:2019/12/01   特集記事, 市政だより記事

多様性を認め合う、こころ豊かな社会へ   2019/12/01

お問い合わせの際は、過去の記事もございますので、掲載時期をご確認ください。

多様性を認め合う、こころ豊かな社会へ

市は、思いやりに満ち、誰もが生き生きと輝けるまちづくりを進めています。LGBTをはじめとする性的マイノリティ(少数者)への関心が高まる中、多様性を認め合える社会について考えてみませんか。
性的マイノリティの支援に取り組むNPO法人「レインボースープ」の代表・五十嵐ゆりさんに話を聞きました。
普通とは違う自分に自己嫌悪

Rainbow Soup(レイン ボースープ)代表 五十嵐ゆりさんの写真
私が自分の恋愛感情に違和感を覚えたのは、中学2年の時です。女子を好きになる自分に困惑しました。当時は情報が少なく、「同性愛」を辞書で調べると「異常なこと」と書かれていました。誰にも知られないように学校では男子を好きなふりをしていましたが、心の中はいつも自己嫌悪でいっぱいでした。

家族へのカミングアウト

家族にも秘密にしていましたが、精神的に耐えられなくなり、母に打ち明けました。知り合いに女性同士で暮らす人がいたこともあり、母は「大丈夫。気にしなくていいよ」と受け止めてくれました。父も、私を責めず、理解しようとしてくれました。「家族にうそをつかなくて済む」と心が救われ、ごく一部の友人にだけ話せるようになりました。

社会人になっても「プライベートなことを聞かれたらどうしよう」「知られたら、仕事がなくなってしまうかもしれない」など、常に不安がありました。好きな異性のタイプを聞かれたときのためにシナリオを作ったり、同居するパートナーを友人と偽ったり。周囲と深い人間関係を築けず、本当の自分をごまかし続けてきました。

レインボースープを立ち上げるまで

転機が訪れたのは30代後半です。将来のことが不安になり、同じ悩みを持つ仲間と「老人ホームをつくって暮らそう」と話しましたが、実現させる知恵もなく…。そんなとき、行政書士の先生に出会い、遺言状や公正証書などについて同性カップルでも利用できる制度があると知りました。先生からさまざまなことを学ぶうちに「やりたいことを実現するためにNPO法人をつくってみては」と勧められ、平成27年に仲間と一緒に「レインボースープ」を立ち上げました。

当事者が抱える生きづらさ

私たちは、行政、学校関係者、企業の人事担当者、法律の専門家やカウンセラーなど、いろいろな人たちの協力がなければ活動を前に進めることができません。そのため、性的マイノリティに関するセミナーや講演会などを行っています。参加者には、性的マイノリティは特殊な存在ではないと感じてもらえているようです。

幸い、私は周囲にも受け入れられ、今はNPO法人の代表として、いろいろな機会を与えられています。しかし、多くの当事者は誰にも打ち明けられなかったり、打ち明けても拒絶されたりして苦しんでいます。

例えば、家族から結婚のプレッシャーを掛けられて地元を離れてしまったり、自身の性自認(下記事参照)と異なる制服を着る苦痛を強いられたり、名前と見た目の性が一致しないために病院に行くのをためらったりするなど、それぞれに生きづらさを抱えています。当事者であることを周囲にばらされて精神的に不安定になり、自死に至るケースもあります。周りの人と違う自分への嫌悪感や罪悪感、人に知られたらどうしようという不安、誰とも関われない孤独感などで苦しい思いをしている人も少なくありません。

違いを認め、互いを尊重し合う気持ちが大事

残念ながら今の社会は、まだまだ多数派が前提とされています。自分が当たり前と思っていることが、そうではないということ、「自分の普通」と「他人の普通」は違うということに気づくことが、誰もが生きやすい社会をつくっていくための第一歩だと思います。性的マイノリティに限らず、国籍、家族構成、アレルギーの有無、内部障がいなど、目に見えない違いに対する感性を一人一人が磨き、互いを尊重し合う気持ちが、多様性を認め合う社会の実現につながっていくと思います。

●性の在り方は多様

性の在り方は、次の四つの要素から捉えることができます。一人一人に個性があるように、性の表れ方や組み合わせも人によりさまざまです。
※性的マイノリティは日本の人口の8.9%いるといわれています(2018年電通調べ)。
<1>身体の性(出生時の戸籍に記載されている性別)
<2>性自認(自分の性別をどのように認識しているか)
<3>性的指向(好きになる相手の性別)
<4>性表現(しぐさ、言葉遣い、服装など)

性の在り方は多様の表
L Lesbian(レズビアン)女性として女性を好きになる人
G Gay(ゲイ)男性として男性を好きになる人
B Bisexual(バイセクシュアル)相手の性別に関わらず好きになる人
T Transgender(トランスジェンダー)出生時の戸籍と異なる性別を自認している人
LGBTとは、上記四つの頭文字をとった、性的マイノリティの総称の一つです。このほかにも他者に性的関心を持たない人(アセクシュアル)や、自認する性別がどちらでもないという人(クエスチョニング)などもいます。

●アライ(ALLY)

 

アライ(ALLY)の表

同盟、支持者を意味する「Ally」が語源とされ、性的マイノリティの当事者を支援する人たちのことを指します。企業などで性の多様性を象徴する虹色のレインボーフラッグやステッカーを掲示するなど、アライであることを示す取り組みが広がっています。

市人権啓発センター(ココロンセンター)の図書閲覧室をご利用ください
人権に関する図書やビデオ、DVDなどの閲覧や貸し出しを行っています。詳細は、市ホームページ(「ココロンセンター」で検索)で確認を。

●図書の一部を紹介

『こんなのへんかな?』大月書店

こんなのへんかな?の写真
村瀬 幸浩/著、高橋由為子/絵
男の子は青、女の子は赤って誰が決めたのだろう。既存の考え方にとらわれず、自分らしく生きるとは?
『弟の夫』(全4巻)

弟の夫の写真
小学生の娘と二人で暮らす弥一のもとに、カナダからマイクという男がやって来る。マイクは死んだ弟の結婚相手だった…。

【場所・問い合わせ 】市人権啓発センター(福岡市中央区舞鶴二丁目 あいれふ8階)

電話 092-717-1237

FAX 092-724-5162

【開館時間 】午前10時~午後9時(日・祝日および2019年12月28日は5時半まで)

【休館日 】最終火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始

原中学校
当事者の思いを知り、自分に何ができるかを考える

 

授業の写真
市内の小中学校では、人権学習の中で性的マイノリティについての授業が行われています。
原中学校(福岡市早良区飯倉四丁目)では、昨年度から学年ごとに「性の多様性」について学び始めました。1・2年生では、人権読本「ぬくもり」や田川市の中学生が当事者を取材した映像などの教材から、性の在り方はさまざまであることを学び、自分たちに何ができるかを考えています。3年生では、今年から当事者を迎えて講演会を行っています。

9月に五十嵐ゆりさん(2面参照)を招き、話を聴きました。生徒自身が学習の目標や五十嵐さんへの質問事項を設定し、講演会に主体的に関われるようにしました。「性的マイノリティの人ではなく、その人をつくっている要素の一つが性的マイノリティだと分かった」「今の自分に自信がなかったけれど、ありのままの自分でいいと言われ、勇気をもらった」などの感想が挙がりました。

学習を進める養護教諭の深川先生は、「多くの生徒は、もし友人が性的マイノリティだったら支えたいと思っていますが、中には理解できない生徒もいました。当事者の話を聴くことで、性的マイノリティは一つの個性であることが胸にストンと落ちたようです。今後も各クラスの担任と協力しながら生徒に伝えていきます」と話していました。

保健室の前の掲示板の写真

博多マルイ
「誰も置き去りにしない店づくり」のため、社外との連携も

博多マルイと「Caapa」(チャーパ) の皆さんの写真
博多マルイ(福岡市博多区博多駅中央街)では、誰も置き去りにしない「インクルージョン(包括)」という考え方の下、ユニバーサルデザインを導入して館内の設備を整えたり、利用者の声を生かして商品開発を行ったりしています。接客研修も行われ、店内には数多くのレインボーフラッグが掲げられています。

性的マイノリティの啓発イベント「九州レインボープライド」にも毎年ブースを出展しています。今年は、性的マイノリティへの理解を啓発する筑紫女学園大学のサークル「チャーパ」と共に、来場者が思いを発信できるメッセージボードを設けました。来場者がいろいろな方法で発信できるようにしたいという学生の声を生かし、ボード以外にも落書き感覚で書き込めるテーブルを準備したり、後でゆっくりスマホから送信できるようにしたりしました。

メッセージボードの写真
東京の支援団体とインターネット中継で意見交換も行いました。チャーパの代表・樋口美紀さんは、「当事者の力だけでは限界があるので、支援者の力が必要ですと言われ、力をもらいました」と話していました。
博多マルイの杉山美奈子さんは、「活動を始めて3年になります。今年は原点に立ち返り、皆さんがどんなことを考え、どんなことを望んでいるのかを知りたいと思いました。社外の人たちともつながることができ、活動の輪が広がっていることを実感しています。自分たちにできる最善のことを続けていきます」と話していました。

広く、浅く、ゆるくつながる「まぜこぜの社会」

 

女優 東ちづるさんの写真
私たちの周りには、さまざまな理由から、生きづらさを抱える人がたくさんいます。
東日本大震災が起きた時、そうした人たちが追い詰められてしまう現実があることを知りました。例えば、避難所で車いすの人が断られたり、トランスジェンダーの人が更衣室やトイレに困ったり。どんな状況でも誰も排除しない、されない社会を目指して、一般社団法人「Get in touch」(ゲット イン タッチ)を立ち上げました。この名称には、「つながろう」という意味もあります。

Get in touchでは、音楽やアート、映像、舞台などを通して、いろいろな人たちが広く、浅く、緩くつながる「まぜこぜの社会」の居心地の良さを発信しています。私たち自身が色とりどりの特性を持った一人であり、社会で生きているということを体感できるよう、障がいのある作家のアート展や、自閉症への理解を深めるためのイベントなど、さまざまな活動を行っています。

映画「私はワタシ~over the rainbow」は、「自分たちのことを知ってほしい」という性的マイノリティの友人の声を受けて製作しました。この映画は、10月に福岡市で行われた「ハートフルフェスタ」でも上映されました。50人の当事者を取材して衝撃だったのは、「普通の人と違うから大人になれない」「家族を悲しませるから、本当のことを言えない」と、子どもの頃から生きづらさを抱えてきた人が多いことでした。現在、1,000校を目標に全国の小中高校に映画のDVD「自分が自分らしく生きるために」を無償で配布しています。

最近は、性的マイノリティを理解して応援する人も増えました。一方でそうでない人との意識の差が広がっているようにも感じます。違いを認め、互いに支え合う「まぜこぜの社会」をつくっていけば、みんなが自分らしく幸せに暮らしていけると思います。

市は、性的マイノリティの人々を支援しています

●パートナーシップ宣誓制度

市は、性的マイノリティのカップルの関係を尊重する「パートナーシップ宣誓制度」を導入しています。宣誓したカップルには受領証が交付され、家族として市営住宅への入居申し込みをすることや、患者本人の同意の下、市立病院で病状の説明を受けたり、手術に同意したりすることなどができます。また、熊本市と協定を結び、両市間で転入出しても申請書の提出のみで、従来の受領証が使えるようになりました。

●弁護士による電話相談 電話 092-070-7655-1698

毎月第2木曜・第4土曜日正午~午後4時に性的マイノリティが抱える悩みについて、専門知識を持つ弁護士が相談を受け付けています。
このほか、性的マイノリティの人たちが気軽に情報交換できる交流会を毎月開催しています。
それぞれの詳細は、市ホームページ(「福岡市 性的マイノリティ」で検索)でご確認ください。

■2面・3面の記事に関する問い合わせ先/人権推進課

電話 092-711-4338

FAX 092-733-5863

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