福岡市美術館が所蔵する約1万6千点のコレクションの中から、えりすぐりの逸品を紹介します。
個性豊かな学芸員が、それぞれの見方で解説します。
《クリシュナ物語図更紗壁掛》
木綿 196センチ×127センチ
インド 17~18世紀
絵画?
いえいえ実は…
緑濃い樹木の下にたたずむ4人の女性。
その周りを動物や鳥が取り囲んでいます。
濃い青色で表されているのは、水辺でしょうか。
まさに一幅の絵画のように見えますが、実はこれは筆で描いたものではなく、木綿の布を染めた、更紗(さらさ)と呼ばれる染め物です。
本作は、ヒンズー教の神・クリシュナの寺院を装飾するためにインドで制作されました。
クリシュナは、通常青い肌の青年として描かれ、ゴピと呼ばれる牛飼いの女性たちに慕われたことでも知られています。
クリシュナにまつわる図には、本作のようにゴピと牛がしばしば描かれます。
ところで、肝心の
クリシュナはどこに?
ヒントは、ゴピと牛の目線。
みんな向かって右の方向を見ています。
実は、この視線の先に、クリシュナの彫像が祭られていました。
本作は、クリシュナ像を飾る大きな壁掛けの一部でした。
愛と慈悲の神・クリシュナを取り巻くように描かれた生き物たちは、明るくのびやかで、生命力に満ちています。
■問い合わせ先/
福岡市美術館
(福岡市中央区大濠公園)
電話 092-714-6051
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