福岡市美術館が所蔵する約1万6千点のコレクションの中から、えりすぐりの逸品を紹介します。
個性豊かな学芸員が、それぞれの見方で解説します。
《桜を放つ女性》
2019年
インカ・ショニバレCBE(1962~)
※近現代美術室Cに展示
パワフルな姿が表すのは
鮮やかな色と模様のドレスを着た女性がライフルを構えています。
頭は地球儀。
銃口から飛び出すのは、2色の花をつけた桜。
本作品は、いくつもの意外な組み合わせで構成されています。
英国を拠点に活動するインカ・ショニバレCBEは、ナイジェリアにルーツを持つ美術家です。
黒人で、身体に障がいがある彼は、マイノリティの立場から、歴史上の支配する側・される側の関係や、社会の不均衡を鋭く指摘してきました。
人をあっと驚かせる造形の中に、深刻な主題が含まれています。
本作のテーマは、「女性のエンパワーメント」だと彼は言います。
地球儀には、国名の代わりに権利獲得に尽力した女性たちの名前が記されています。
武力や暴力の行使によって国家が覇権を争ってきた過去に終止符を打ち、女性たちの力、創造的な力、多様な人々の連帯から生まれる力で世の中を変えていこう。
力強く華やかな本作には、そんな希望が託されています。
■問い合わせ先/
福岡市美術館
(福岡市中央区大濠公園)
電話 092-714-6051
FAX 092-714-6071